2016年3月2日水曜日

報道部決死隊 ~滝行で合格祈願の巻~


 滝行――密教や修験道で行われる修行の一つである。自然と一体化することで雑念を払い、精神の統一を目的とする、はずだったのだが。




 2月某日。センター試験が終わり、受験生の諸君は二次試験の対策に追われていることだろう。本学は決して容易に入れる大学ではない。中には苦しみながら勉強している受験生もいるはずだ。受験勉強の苦しみを代わりに受けてあげたい。そんな慈悲深い思いに駆られた筆者は、「滝行」という手段で受験生の苦しみを代わりに受けることにした。

 すさまじい論理の飛躍を感じるが、一旦動き始めた筆者は止まらない。善は急げだ。暇そうにしていた部員Fを誘い、早速宮城県丸森町の清滝へ車を走らせた。

 約2時間後、我々は快晴の下で大自然に囲まれていた。しばし山紫水明の眺めを堪能した後、清滝への山道へ向かった。ここまでは良かったのだ。ここまでは……。

 山道の傾斜は並大抵のものではなかった。手を地に付かなければ歩けない場所もあった。その上段々道幅が狭まっていき、死の気配が身近に感じられた。途中立ち寄った神社では受験生の合格を祈願するつもりだったが、あまりの恐怖に「死にませんように」と祈ってしまった。本当に申し訳ない。

 その後1時間程歩き続け、何とか清滝に到着した。滝が凍ってしまっていたらどうしようと思ったが、杞憂であった。滝は淀みなく流れている。2人で白装束に着替え、恐る恐る裸足を水につけてみる。「アヒィ!」とFが叫ぶ。刺すような痛みが両足に襲う。止まっても地獄、進んでも地獄である。しかし我々は受験生のために受苦しなければならない。意を決し、「せーの」の掛け声に合わせて滝へ飛び込んだ。

滝の冷たさといったら筆舌に尽くしがたい。筆者は笑顔で滝壺に入ったが最後、冷たさで顔が凍り付いてしまった。危うく企画の本分を忘れてしまいそうになる程であった。しかしそれではここに苦労して来た甲斐がない。しっかりと「受験生が合格しますようにと」何度も念じた。

 滝行を終えた筆者たちの表情はなぜか穏やかであった。雑念が取り払われ、心は水平線のように静かに感じられた。これが滝行の力かと感嘆する筆者をよそに、Fは「自分は一度死んで再び生まれたのだ」とポツリ。なんとF、人間の理を超越していた。

 これほどの辛苦を経験したのだから、諸君には本学に合格してもらわないと割に合わない。奇しくも今回滝行を経験した2人は受験に失敗している。そのマイナスエネルギーと清滝のマイナスイオンが掛け合わさったのだ。この滝行が受験生にとってプラスに働くことは自明である。終始謎の理論を展開してしまったが、我々報道部は諸君の合格を心より願っている。ファイトだ、受験生!

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